高齢の親の介護について考えるとき、多くのご家庭で直面するのが「施設入居」の問題です。特に、親御さん自身が「施設には入りたくない」と強く拒否する場合、家族はどう対応すればよいのか頭を悩ませることになります。親の気持ちを無視して強引に進めることは、親子関係の悪化や本人の精神的負担につながりかねません。本記事では、親が施設入居を拒む理由を丁寧に解説し、その気持ちに寄り添いながら説得するためのヒントを、事例や具体的な会話例も交えて3000文字以上でご紹介します。
■ 親が施設入居を嫌がる主な理由
まずは、親がなぜ施設に入りたくないのかを理解することが大切です。理由を理解しないまま説得しようとしても、相手の不安や反発を強めてしまうだけです。よくある理由を整理してみましょう。
- 住み慣れた自宅を離れたくない
長年暮らしてきた家には、多くの思い出や安心感が詰まっています。壁のシミや庭の木々、近所の人々との関係など、自宅はただの「住まい」ではなく「人生そのものの舞台」です。そのため、そこを離れることは自分の歴史を手放すように感じてしまう方も少なくありません。 - 「まだ元気だから大丈夫」という自立心
高齢であっても「自分はまだしっかりしている」というプライドを持つ方は多いです。実際に介助が必要な場面があっても、それを「一時的なこと」と捉え、施設は自分にはまだ早いと感じてしまうのです。 - 「施設=終の住処」というマイナスイメージ
一昔前は、老人ホームに入ることが「人生の最終段階」と結び付けられて語られることもありました。そのため「施設に入る=家族に見捨てられた」「人生の終わりが近い」というネガティブな先入観を抱いている方も少なくありません。 - 費用面の不安
施設入居には毎月の利用料がかかります。親としては「子どもに迷惑をかけたくない」という思いから、費用を理由に拒否するケースも多いです。「お金がかかるから自宅でいい」という言葉の裏には、子どもへの気遣いや自己犠牲の気持ちが隠れていることもあります。 - 自由が制限される心配
「好きな時間に外出できない」「好きな食事ができない」「趣味が制限される」など、施設での生活は自分らしさを奪うのではないかという不安があります。実際には自由度の高い施設もありますが、そのイメージが先行してしまい、強い拒否につながります。
■ 拒否する気持ちへの向き合い方
親が施設入居を嫌がる気持ちには、必ず背景があります。その気持ちを理解し、受け止める姿勢を持つことが、説得の第一歩です。
- 本音をじっくり聞く
「なぜ嫌なのか」を聞くことから始めましょう。「施設なんて絶対に嫌だ」と感情的に言われても、「どうしてそう思うの?」と穏やかに尋ねることが大切です。親が本音を口にすることで、安心感を得られます。 - 否定せず共感する
「そんなこと言わないで」ではなく、「その気持ちわかるよ」と共感を示すことが信頼関係を守る鍵です。否定されると意固地になりやすいため、まずは理解を示すことを心がけましょう。 - 施設のメリットを具体的に伝える
漠然と「安心できるよ」ではなく、
- 24時間スタッフが常駐している
- 医療体制が整っていて緊急時も対応できる
- 食事や入浴のサポートがあり生活が楽になる
- 同世代の仲間と交流できる といった具体的な利点を説明することで、イメージが前向きに変わりやすくなります。
- 実際に見学や体験をする
言葉で説明するよりも、実際に施設を訪れて雰囲気を感じることが一番効果的です。「思っていたより自由だ」「スタッフが優しい」と感じて、拒否感が和らぐケースも多いです。体験入居ができる施設を利用するのも良い方法です。 - 少しずつ慣れるステップを踏む
いきなり長期入居ではなく、ショートステイを利用して数日間だけ滞在してみるのもおすすめです。「短期間なら大丈夫」と思えることで、徐々に気持ちが前向きになっていく場合があります。
■ 説得のコツ
施設入居を提案するときの伝え方によって、相手の受け止め方は大きく変わります。説得を成功させるためのコツをいくつか紹介します。
- 「家族の安心」も理由にする
「私たちも安心できるから」という伝え方は効果的です。親は「自分のため」よりも「家族のため」であれば納得しやすくなります。 - 複数の選択肢を提示する
「この施設しかない」ではなく、複数の施設を一緒に検討することで、親が主体的に選んでいる感覚を持てます。選択肢を持つことはコントロール感につながり、安心感を与えます。 - 在宅サービスとの比較をする
「訪問介護やデイサービスと比べてどう違うのか」を整理して伝えることで、納得感が深まります。「施設しかない」という押し付けではなく「どちらが合うか一緒に考えよう」という姿勢が重要です。 - 焦らず時間をかける
1回の話し合いで決断を迫るのは避けましょう。人は大きな変化に抵抗を感じやすいため、少しずつ時間をかけて話題に出し、繰り返し考えてもらうことが効果的です。 - 第三者の力を借りる
ケアマネジャーや医師、施設スタッフなど、専門家からの説明は説得力があります。家族が言うよりも受け入れやすいケースがあるため、必要に応じて第三者に協力をお願いしましょう。
■ 実際の事例紹介
ある70代の母親は、脳梗塞の後遺症で歩行が難しくなったにもかかわらず、「まだ家で生活できる」と施設入居を頑なに拒んでいました。娘さんは介護と仕事の両立に限界を感じていましたが、無理に説得すると母親が心を閉ざしてしまうと悩んでいました。そこでまずはデイサービスを利用してもらい、少しずつ外部のサポートに慣れてもらいました。その後、ショートステイを体験し、スタッフや他の利用者との交流が楽しいと感じた母親は、最終的に自ら「施設に入ってみてもいい」と言うようになりました。
この事例からも分かるように、「段階を踏む」ことが大きなポイントです。一足飛びに入居を決めるのではなく、小さな経験を積み重ねて本人の気持ちを変えていくことが効果的です。
■ 具体的な会話例
親との会話では、言葉の選び方一つで相手の受け止め方が変わります。いくつかの例を紹介します。
NG例
子ども:「もう限界だから施設に入ってよ」
親:「そんなに嫌なら私はいらないのね…」
良い例
子ども:「お母さんが心配で、夜中に転んだらどうしようって思うの。私たちも安心したいから、一度見学に行ってみない?」
親:「見学だけならいいかしら…」
このように、「家族の安心」や「体験から始める」といった提案をすると、相手は受け入れやすくなります。
■ まとめ
親が施設入居を嫌がる理由は、「自宅への愛着」「自立心」「施設への誤解」「費用への不安」「自由の喪失感」など、さまざまです。その裏側には「自分らしく生きたい」「家族に迷惑をかけたくない」という切実な思いが隠されています。
そのため、施設入居を考える際には、まず親の気持ちを尊重し、受け止める姿勢が必要です。そのうえで、施設のメリットを具体的に伝えたり、実際に見学や体験をしてもらったり、少しずつ慣れるステップを踏むことで、拒否感を和らげることができます。
また、「家族の安心」を理由に加えたり、第三者の力を借りたりすることで、スムーズに話が進む場合もあります。事例や会話例のように、段階を踏みながら対話を重ねることが効果的です。
大切なのは焦らず、親の尊厳を大切にしながら、家族全体が安心して暮らせる選択肢を一緒に探すことです。介護は家族だけで抱え込むには大きな負担です。親の気持ちと家族の負担、その両方のバランスをとりながら、納得できる最適な選択を進めていきましょう。
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